長かった梅雨もようやく明けて本格的な夏を迎えました。気候の展開が遅れて目算が狂い苦労された向きもあったことでしょう。幸い屋内で行う剣道の行事には影響がなく、夏休みに開かれる学校関係行事は次々と進められています。猛暑の中、早くも蝉の声も聞こえて秋も近付く季節になり、『剣窓』9月号の編集に取り組むこの頃です。
そういえば先月の「まど」で取り上げるのを失念しましたが、『剣窓』は昭和47年2月に『全剣連広報』として発刊されてから300号となる節目の月でした。記念号としての特集は行いませんでしたが、発刊当初から永く関係し尽力頂いた松永政美氏の回想の文が出ています。遅ればせながらこの欄でも紹介しておきます。
一方、昭和62年6月の月刊化以来駄文を綴ってきた「まど」も、今月は230回を迎えました。編集には関係者それなりに努力をしていますが、『剣窓』購読者数もこのところ伸び悩んでいます。8年前に発足したホームページともども一層の充実を進め、本来の使命を果たして行きたいと思います。ご理解ご支援を頂くことをお願い致します。
昭和59年に始められた第23回を数える標記大会は、昨年に引き続き7月17日の「海の日」の祝日に、日本武道館で開催されました。三重県チームが初優勝を果たしましたが、全般的に好試合が目立ち、女子剣道の充実の波が及んで来ているとの印象を受けました。
大会における女子審判の実力向上を目指して、本年度事業で、男子の講師要員の研修に倣って、女子審判の基幹要員に対する特別講習を取り上げ、5月20日、21日の両日、勝浦市の日本武道館研修センターで24名に対する研修会を実施したばかりですが、その効果が早くも現れたとの評価が専らで、女子審判はいずれも立派な審判を行われました。陰口では男の八段の審判の中に、姿勢態度など見劣りするものがいるではないかとの評が専らでした。新事業の効果が現れたこと何よりと感じています。
恒例の夏の少年武道(剣道)錬成大会は7月29、30の両日、日本武道館で開催されました。集まる少年剣士は両日共、470団体、2,600名を超え、例年のとおり付き添いの家族、応援の方々と併せて、観覧席まで武道館を埋め、熱気溢れる2日の行事を終えました。
大会に臨んでいつも感銘を受けることは、少年たちの生き生きとした凛々しい姿です。望まれることはただ一つ、この少年たちが、剣道を正しく学び、立派に成人してくれることです。そして将来の剣道界、さらには日本の社会を支える存在になって貰いたいものと念願します。
またそれぞれのチームは皆指導者引率のもとに参加しますが、指導に当たられるほとんどの方が、各人の仕事の傍ら、余暇を作って努力して頂いていると思われます。それらの方々は本当に日本の将来のためになる貴重なご尽力を頂いて居るのであり、有り難く感謝の意を捧げたいと思います。
また応援、付き添いの家族の方々に対しては、子供さんが剣道を選ばれたことは、実に良い選択をされたのであり、ぜひ長く続けるよう暖かく見守り、また激励して頂くよう、毎回挨拶の中でお願いしております。さらに主催者側に立つ方々、特に基本技の演武と、立ち会いとを組み合わせる試合の審判は、見るからに難しいものであり、大変苦労を頂いていることと思います。審判の労を取られる方、また大会係員として働いている大勢の方々のご尽力に感謝の意を表させて頂きます。
最後になりましたがこの大会と家庭婦人大会を通じて、ご来賓として三笠宮寬仁親王殿下の第二女子である瑶子女王殿下にお出で頂き、終始熱心に観戦して頂いたことを記し、厚くお礼を申し上げます。瑶子女王殿下は学習院大学剣道部で修業され、本年卒業された剣道愛好者です。皇室にこのような愛好者がおられることは剣道界にとって光栄であり、意を強くするところです。
本年度の全国高等学校総合体育大会は近畿地区で行われ、剣道大会は京都市北区の京都府立体育館で8月2日から3日間にわたって行われました。種目は男女の個人、団体で、メイン会場は4試合場が取れ、世界大会を行った西京極の京都市立体育館より観客の収容力も大きく、運用しやすい会場と好評でした。
高体連は審判技術の向上に、近年努力をしてこられただけあって、なかなかきっちりした審判が行われていました。高校生の試合ぶり、確かに若さ溢れる好感のもてるものが見られ、大会運営も整然と行われていました。優秀選手の表彰も毎回行われ、人材の発掘にも主催者側の努力が見られます。ただ超高校生の素材はなかなか見つからないなとの印象でした。
高校大会を拝見した足で、旧武徳殿で開催されている女子強化訓練に回りました。この訓練は前年度にスタートし、本年末の世界大会のための選手強化を念頭に置いて強化を進めてきました。そもそも強化訓練は試合だけを目標にすべきものとは考えませんが、世界大会に接近してくると、これを目標に進めることになるのは自然の成り行きです。特に日本の剣士は世界各国の剣道人が目標にし、また模範として注目することになります。それに応えるためにはただ勝つだけでなく、立派な試合振りが期待されます。
本年度に入って3回目の訓練ですが、次第に試合を重視する方向になります。すでに前回から受講生を20名に絞っていますが、この講習を最後として、大会にエントリーする10名を選考し、選手団を構成して、大会を目指すことになります。
暑い京都で、冷房もない武徳殿で、稽古と試合に励んでいました。さすがに高校大会の試合に比べると、緊迫感と技が見違える程であり、まずは一安心させられました。世界に女子剣道の模範となることを期待される面々の一層の前進を期待します。
社会体育指導員養成講習会の中級は、首都圏、近畿、北九州などの大都市圏で実施されることが多いのですが、第22回の中級講習会は日本海側の松江市で7月21日から3日間、開催されました。異常な梅雨が九州、山陰地区を襲い、心配されましたが、天候にも恵まれ充実した講習として成果を収めました。
参加者は43名で山陰地方の他、近畿、愛知からの参加が目立ちました。また同時に行われた初級更新講習には56名が参加され、併せてこの地域の指導力の向上に大きく寄与することになりましょう。山紫水明のこの地での講習会開催に当たり、地元島根県剣連の方々のご尽力に深謝します。*
本年日本体育協会で表記の顕彰制度が新設されました。この賞は「生涯スポーツ社会」に貢献した実践者に授与し、その功績をたたえ生涯スポーツの振興に資することを目的としています。
今回全剣連の推薦に基づき、体育協会で選考され、宮本 海範士(静岡県・87歳)が、他のスポーツ功労者6名とともに表彰されることになりましたのでお知らせしお慶び申し上げます。授賞は国体開会式の際行われます。
去る7月1日に逝去された全剣連顧問、全日本学生剣道連盟会長、(財)全日本道場連盟会長故橋本龍太郎氏の内閣・自由民主党合同葬が、小泉内閣総理大臣が葬儀委員長となって、8月8日午後、日本武道館において行われました。
国葬に準ずるほどの大きな葬儀であり、武道館を埋める内外の多数の方々が参列、しめやかに剣道人元宰相の冥福を祈りました。
明治維新に際しては幕臣として大きな役割を果たし、明治新政府にあっては天皇侍従として功績があった山岡鉄舟は、剣禅両全の人であり、無刀流の創設者で剣道の思想面でも貢献ある人として、剣道殿堂にも列しています。(『剣窓』7月号21頁の記事参照)
鉄舟は明治21年に亡くなられ、歳忌法要が7月19日に居士開基の台東区下谷の全生庵で毎年行われます。本年はここに参列し、現代剣道につながるご功績に感謝させて頂きました。
エピソードとしては鉄舟が大変アンパンを好まれたことです。明治早々に東京で創業した木村屋は苦心の末、日本独特のパンを工夫し、今に伝わるアンパンを実現したのですが、鉄舟はしばしば店を訪れられたのみならず、店の名を揮毫され、現在もその字が銀座本店に掲げられているそうです。
今に伝わる桜の花の塩漬けを真ん中においたアンパンは当時創案されたもので、宮中にも献上されたとのことです。
(敬称略)