去る10月6日は陰暦の8月15日に当たり、古来人々が中秋の名月を愛でる日でした。例年この日は太陽暦の9月にあるのですが、今年は陰暦のうるう年のため10月にずれ込んだようです。残念ながら太平洋岸に接近した台風性低気圧のため日本列島の大部分は悪天候、日本人にとって大事な伝統文化の月見の機会が持てなかったのは残念でした。
陰暦の同じ月に自民党総裁の任期が終わり、安倍晋三新内閣が発足しました。そこで思い出されたのは総理の座を目前にして病に倒れた先代安倍晋太郎氏です。氏は戦前に剣道に励まれ、岡山の旧制六高時代には、主将の立場の選手監督を務められました。
新首相は剣道はやられないようですが、精神は伝わっているようお見受けします。ご健闘を祈ります。
新内閣で久間章生氏が防衛庁長官に就任されました。氏は剣道人で、全剣連顧問もお願いしています。二度目の防衛庁長官として懸案の解決に実績をあげられると思います。
また新内閣で期待されるのは文部科学大臣に就任された伊吹文明氏です。伊吹氏は昨年より京都府剣道連盟の会長に就任されており、本年5月の武徳殿での演武大会開会式に出席され、参加者を激励頂き、「日本のこれからのために」と題して7月号の「剣筆」に寄稿頂きました。お読み落とされた方は是非ご覧下さい。教育基本法改正など教育行政の革新を期待させて頂きます。
52回目という歴史を重ねた大会は、6年振りに日本海側に移り、9月24日(日)に柏崎市総合体育館で開催されました。日本を東西に分けての対抗試合の形は長年変わりませんが、人の移動が容易、活発に行われる時代になると、対抗の色彩は薄れ、高段者が雌雄を決するレベルの高い選抜試合としての内容が期待される大会になっています。
全国から選抜され参集した実力剣士たちが、一回だけの試合で見せてくれる大会です。延長があるとはいえ、時間5分では実力を出しきれず、消化不良に終わる試合が多いのが近年の傾向でした。前年の鹿児島大会から試合時間を10分にし、本来の三本勝負が行われることを期待して迎えた大会でした。
前年は選手にも戸惑いがあったようですが、今年は時間の使い方にも慣れ、終始力を出しきった迫力ある試合が続き、見る者を堪能させた大会となりました。
35試合の勝負を数字で見ます。一本勝負で終わったのは前回の11を下回って6、うち2試合は10分で決まらず一本勝負になったもの、一本取って時間切れの勝負は4試合に止どまり、他の29試合は二本取っての三本勝負が行われました。特に注目の八段の対戦17試合はすべてが三本勝負で決着しています。またストレートに二本とった試合は全体の6割を占める21、そのうち5分以内に終わった試合が9ありました。
試合時間から見ても以上のようになり、それぞれ選手の試合内容に影響を及ぼした跡が感じられます。個々の試合の戦評は観戦された方や、他の記事に譲り、死力を尽くして勝負を展開された選手諸氏の労を多としたいと思います。
歴史の浅い女子の部は、前座試合の色彩が強いのですが、それぞれ立派な試合を展開されました。ただここで問題とすべきは女子の試合時間で、どこでも4分が上限とされており、男子と区別される形になっています。女子のレベルが高まっている現在、是正を考えるべき時と感じます。またこれについて何処からも改正すべきとの提案がないのを不思議に思います。
地の利は余り良い場所ではありませんでしたが、会場を埋める観客も集まりました。準備、運営に万全を期して成功に導いて頂いた地元ならびに新潟県剣道連盟のご尽力に謝意を表します。
この大会は政府が始めた「スポーツ拠点づくり推進事業」の一環として、(社)大阪府剣道連盟の発意に基づき実現したものです。都道府県単位の小学生、中学生チームによる優勝大会であり、「(財)地域活性化センター」を通じて政府から助成金が出されます。少年の剣道大会は各地で行われ、試合がありすぎるとの批判も聞こえますが、この大会は政府の支援事業であること、全国都道府県を網羅した規模であること、大阪府剣連の発意による西日本で行われる全国大会であることなどを考慮して、全剣連も開催に賛同しています。
試合に明け暮れることは剣道の趣旨から感心しませんが、試合を修業の励みにすることは、指導の妙となります。各種スポーツで少年の試合が氾濫している今日、剣道も試合を取り入れた振興策を考えることも必要です。その意味でこの大会を上手に利用していくことができればと感じます。
大会の企画から実行までの期間が短かったこともあり、選手決定や費用の準備などで、参加者側で難しい問題が多かったようです。それでも37都道府県の参加のもと、9月17日(日)に大阪市の舞洲アリーナで盛大に実施されました。運営、審判などもさすがにテキパキと行われていました。今後の発展を期待しましょう。
杖道大会は各地持ち回りで開催されます。普及度が高くない関係で、主管できる剣連が限られていますが、ここ2回地方開催が続きました。3年振りに東京に戻って、いつもの会場である江戸川区スポーツセンターで、10月8日(日)大会が開催されました。
大会は剣道、居合道の全国大会と異なり、普及度の関係もあって、県別のチームは組まず、2人1組のトーナメントを段別に行い優勝者を決めます。また三段以下は、優勝という形にせずに2組を優秀者として表彰します。本年は久方振りの東京での開催でもあり、530名という多数の参加があり盛会でした。
杖道は元を尋ねれば、佩刀を許されなかった平民、農民の自衛のための武術として始まり伝えられてきたものと思います。現在は当時のような階級的差別はありませんが、剣道が高価な剣道具を揃えなければならないのに比べれば、軽装備であまり金をかけずに始められる杖道は、普及についての有利な条件を備えているものと感じます。剣道と違った魅力を持つ杖道をもっと普及させたいものです。
第61回国体剣道大会は、10月1日(日)より4日(水)まで兵庫県赤穂市市民総合体育館で開催。訓練を積んだ地元兵庫県が充実した戦力を以て、成年男子・女子、少年男子の3種目に優勝。堂々の総合優勝を果たしました。二位は同点で埼玉県および熊本県となりました。
全国からの高段者101名を集めて居合道中央講習会を、9月16日(土)、17日(日)の両日、例年の通り京都市武道センターで開催し、充実した講習会を終えました。
8月末に決定した選手団は、男女それぞれのプログラムに従って仕上げに取り組んでいます。
女子チームは9月17日(日)~19日(火)、京都市の立命館大学武道館(17~18日)、大阪府警察本部関目別館(19日)において、男子チームは9月20日(水)~23日(土)、警視庁武道館において、それぞれ相手を選んで強化合宿を行い、世界大会に向けて団結を固めました。