2006年12月号

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今月のまど

秋も深まって来ました。全日本剣道選手権大会を終え、11月7日は早くも立冬で、暦は冬に入ります。紅葉前線は南下を続け本誌がお手元に届く頃は、北の丸公園の木々を黄金色に彩っていることでしょう。

国会で教育基本法の審議が本格化しています。敗戦直後に占領政策の強い影響下に作られたこの法律が、60年も放置されて来たことを思うと、衆知を集めて改正案を速やかに成立させ、自前の基本法を制定することは急務です。問題山積の学校教育の立て直しを進めて欲しいと期待します。

さて剣道は日本の人作りの一翼を担うものと自負しています。その健全な発展を目指す剣道界に、剣道指導の指針を作ることがぜひ必要と考えました。全剣連は長期構想企画会議を設け、ここで「剣道指導の心構え」を取り上げその立案を進め、3年目にしてようやく成案を得ようとしています。本文が固まり、その説明文について多くの会議の機会に意見を求めており、本年度中に結論を得る予定です。

一般のご理解を得るために、議長の加賀谷誠一副会長が『剣窓』今月号より数回にわたりこれまでの経過、現段階の内容と立案の趣旨について、掲載することにしています。ぜひご覧ください。 

若手の活躍が目立った全日本剣道選手権大会

第54回目を迎えた標記大会は、昨年第二位だった内村良一(東京・26歳)が、古澤庸臣(熊本・28歳)を降して2回目の出場を優勝で飾り、天皇盃を授与されました。26歳の内村の優勝は第50回の安藤戒牛(愛知・29歳)以来の20歳代の優勝で4年ぶり、特に26歳での優勝は20年以上見られなかった快挙です。また決勝を20歳代で争ったのも平成3年に遡ることになり、準優勝の座を得た古澤の健闘も称えるべきことです。

この大会も警察勢の優位が顕著でした。64剣士のうち、警察官は52名を占め、ベスト8を独占しました。また3回戦に進んだ16名の大部分も警察官で、ここに食い込んだのはベテラン教員の竹中健太郎(鳥取)と、世界剣道選手権大会選手の上段・清家宏一(大阪)を1回戦で降したお隣りの小村 健(島根)の2名だけでした。

初出場の18名は力及ばず、12名が1回戦で敗退、2回戦では初出場同志の組み合わせを制した前記の小村を除いて姿を消しました。実業団勢は3名でしたが、東京で警視庁の一角を崩した梅山義隆(NTT東日本)、実績のある立花義人(福岡)、初出場の山中佳英(栃木)とともに、1回戦で退いたのは期待に反しました。

全般的実績のある選手は活躍していますが、「選抜特別訓練講習」の講習生の中から進出してきた4名のうち、優秀選手に選ばれた高橋秀人(東京)、前記の小村、小村に敗れた山下 穣(宮崎)の活躍は今後に期待させるものが見られました。

二位の古澤はダークホースで、予想を書いた警察事情に詳しい編集子も見落としました。新鋭の活躍を褒めるべきでしょう。

さて勝負の内容では相変わらず一本勝負での決着が主体でした。全63試合のうち84%に当たる53試合が一本で決まっています。全部の試合は無理としても、勝ち進んだ選手の対戦にはもっと時間を与えることが必要でしょう。この大会の優勝者の内村は、準決勝戦で外山浩規(愛知)に、また三位の髙鍋 進(神奈川)は4回戦で清水基史(愛知)にそれぞれ一本を先取され、それを辛うじて時間内に同点にし、延長で勝利を収めています。一本を挽回する時の激しい戦い振りは手に汗を握るほどでした。このような試合を増やし、実力あるものが勝つ三本勝負を増やして行くべきと痛感しました。

この試合には8千名を越す観客を集めていますが、アリーナ席を除き、一、二階席を見ると満員御礼を掲げるまでに行きません。この面への努力も強化することが必要です。しかし今次大会は後半に入って試合内容が盛り上がり、観客にも満足して貰えたと思います。選手、審判員、その他大勢の関係者の努力に深謝します。

大会こぼれ話

①優勝者の内村は警視庁勤務の東京都代表ですが、出身は熊本県。準優勝の古澤は熊本県代表で同県出身。さらに三位の神奈川県代表・髙鍋も熊本県出身で、ベスト四のうち三名を占めた熊本デーになりました。

②少年演武の大義塾の出場者に、前国土交通大臣の石原伸晃氏のご子息が加わっており、ご自身も応援にご来場頂きました。 

石丸俊彦、長島末吉、松本明正の3氏に剣道功労賞

今年の剣道功労賞受賞者選考は、10月11日に選考委員会を開き審議の結果、石丸俊彦氏、長島末吉氏、松本明正氏の3名の方への贈賞を答申頂きました。全剣連は11月2日の理事会に付議し決定、11月3日付け発令しました。

石丸氏は現弁護士、元東京高裁判事、全剣連では審議員、副会長、綱紀委員長を務められ、特に試合・審判、称号・段位審査規則の立案に当たって法制面でご尽力頂くなど、多くの功績を挙げられました。

長島氏は剣道範士、元警視庁首席師範として、剣道の発展、後進の育成に当たられ、全剣連役員、審議員としても尽力されました。

松本氏は剣道範士として長年剣道振興に尽力されましたが、特に地元(財)北海道剣連会長も務められ功績を挙げられました。

この他61名の方に剣道有功賞を、また305団体(者)に少年剣道教育奨励賞を贈呈することも決まりました。

平成19年行事日程表を内定

例年どおり11月2日の評議員会、理事会で次年度の行事日程表を内定しました。

本年との主な相違点は、剣道八段審査会です。受審者の増加傾向が続き、審査能力の限界に近付くため、2日かけて行うことにします。このため5月の京都、11月の東京の審査日程が変わってきます。2日への分け方は追って決定されますが、審査員の負担軽減、審査の質の向上の効果もあることと期待されます。

各剣連への後援講習は、本年とほぼ同じ41件出ていますが、希望科目は相変わらず「審判法」が主体です。本命ともいうべき「指導法」がもっと増えることが期待され、追加募集も検討します。

札幌市で第41回全日本居合道大会

居合道大会は今回は北海道に会場を移し、10月21日に道立総合体育センターで開催されました。

全国から500名余りの高段者が参加、五・六・七段のトーナメントの成績による優勝は昨年に続いて千葉県、地元北海道が二位に入りました。相変わらぬ熱心な居合道剣士の参加による密度の高さを反映した大会でした。

全剣連上期の収支状況まとまる

年度上半期を終え、予算の収支のまとめが2日の評議員会・理事会で報告されました。概ね計画の線で進んでおり、収支もまずまずの状況です。

断 片

①藤沢周平の小説を映画化した『武士の一分』公開される

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寅さん映画で有名な山田洋次監督が時代劇に取り組んだ、藤沢周平原作の『たそがれ清兵衛』が公開されたのは4年前で、国内の賞を総嘗めにしたほか、海外でも高く評価されました。その後『隠し剣、鬼の爪』を経て、今回第3作は「盲目剣谺(こだま)返し」を映画化した『武士の一分』が完成し12月1日に公開されます。

藤沢周平の小説には出身地の山形県鶴岡をモデルにした海坂藩の下級武士の生活の中での、剣術の修業や勝負が取り上げられています。その仕事、生活の有様が生き生きと描かれ、その中での真剣の立ち会いが登場します。そして多くの場合、流派の秘伝の技を駆使して勝負が決まります。

今回の『武士の一分』では、城主の食事の毒味役を務める三村新之丞が中毒で失明し、悶々の生活を送る中、主人の処遇に骨折ってやるとの偽りの甘言を以って上役に愛妻を弄ばれた復讐に盲目の身で挑み、秘剣谺返しで相手を倒す筋で、その間の夫婦の愛情物語でもあります。

主役は剣道にも打ち込んでいる木村拓哉が熱演し、愛妻加世を演ずる檀 れいも好演です。剣術指導は野間道場の蓑輪 勝さんが当たられた由、剣道愛好者にとって見逃せない作品です。

(※詳細は公式サイトを参照ください http://ichibun.jp

②秋の審査会の受審者は微増

11月末に東京、愛知での剣道審査会、受審者総計は7千名を超える大型審査会です。 受審者は前年に比較して微増という相変わらずの難関です、実施側も万全を期しますが、挑戦される方のご成功を念じます。

③剣道文化講演会は第5回に

大型審査の後の恒例となった「文化講演会」は、12月2日に九段会館で行われます。
多数のご来場をお待ちします。
(文中敬称略)

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