2007年1月号

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年頭所感

平成19年「年頭所感」―現場への浸透に猛進しよう―

takeyasu2007.jpg 財団法人全日本剣道連盟会長
武安義光

明けましておめでとうございます。剣友の皆さんがそれぞれ良い新年を迎えられ、充実した生活の年を過ごされることを祈念します。

この年は、経済の面では引き続き順調な年であることが予想され、国内政治では安倍新内閣のお手並みに期待される年であり、まずは安定した年となることでしょう。しかし、社会的には凶悪犯罪が後を絶たず、民心も道義的など心配される状況にあり、学校教育の立て直しに関心が集まっております。この中、60年前の占領期に作られた教育基本法の改正が実現しましたが、教育面の改革の成果を挙げていくためには、多くの課題に取り組む必要があります。

このような状況は、剣道界に取っては追い風になってきたと受け取って良いものと思います。日本人が精神的にも、肉体的にもしっかりしたものになって行くための、剣道の役割が期待される時であり、お互い自信を持って取り組んで行きたいと思います。

さて全剣連としては剣道の振興を図るに当たり、つぎの方策を掲げ目標として努力してきました。それはまず「指導・教育を通じてレベルの高い剣道を育てること」「普及を進めると共に愛好者を増やす努力を高めること」を挙げ、さらに「社会における剣道への理解を深めるための活動を強化すること」であります。全剣連は、その目標達成のための基盤になる事業を取り上げ、逐次進めて参りました。普及、発達を図るための柱として取り上げてきた事業については、幸い成果を得る段階に来たものと考えています。

いくつかの例を上げましょう。

講習事業の充実を図るための教材の刷新をまず行いました。また各地域への講習を充実するための計画と実施を、各剣連が立案・実施し、全剣連はこれを援助する方向に軸足の重心を移しました。剣連により実行への取り組みに差が出ましょうが、全国的に見て逐次成果が上がるものと期待しております。例えば学校剣連で、全剣連の補助を得て中・高の先生の講習をブロック単位で重点的に進めるようになりました。

指導者の育成として審判講習の講師要員の講習認定を行って来ましたがトップを担う講師が充実し、各地で活躍しつつあります。

また初心者への教育に資するために「木刀による剣道基本技稽古法」を策定し普及を進めています。指導者の能力向上のために取り上げて10年を経た社会体育指導員認定講習は、昨年度に上級講習を行う段階に達しました。この間、講習を受け、初・中級資格を取られた方は5千名に及んでいます。これらの方が全国各地で活動され、剣道普及の一翼を担っていくことが期待されます。

さて剣道人の向上への意欲をかきたてる称号・段位の付与のための審査は、新規則に基づき進められ向上、定着しつつありますが、地方剣連に委任している五段以下の審査について実態把握を行い、これに基づく助言・指導を行って、向上の成果が上がりつつあります。

さらに全体の指導理念の具体的指針とすべく、「剣道指導の心構え」の立案を進めて来ましたが、ようやく成案を得る段階に至りました。

これらの事業は、全剣連執行部また関係された多くの方々の協力努力により進められてきました。大事なことはこれらのことが、各地の現場に及ぶことにより、剣道の質が高まり、愛好者の輪が広がって行かなければなりません。道具立て、基盤強化については、全剣連は努力を続けますが、新しい年は、良い意味の普及・発展が、全国の現場で行われ、浸透の実績を収める年としたいものです。このためには挑戦すべき多くの壁があります。高校授業における剣道の教育の場が弱体化しているとされる実態は、その一例と言えましょう。多くの壁を破るために各層の剣道関係者はそれぞれ努力して成果をあげ剣道の発展、社会への貢献を致したいものです。

剣道界は今年日本が独立を回復し、それまで弾圧されていた剣道の新しい体制がスタートして55年を迎えます。今年は1つの節目の年であり、占領下の困難な状況の中、剣道を温存し、その後の回復・発展を成し遂げられた先人の努力に思いを致し、今後の発展への決意を固めたいものです。猪突でない猛進を行う飛躍の年とするため頑張りましょう。

今月のまど

新年のご挨拶は、例年にならい巻頭言に譲ります。

執筆しているのは12月中旬、今年は九段坂の街路樹はまだ黄一色に彩られています。地球温暖化が議論され、北極海の氷が年々溶けているという米国での調査結果が報じられていますが、これも地球全体の調査と結果解析できるような技術の進歩に依るものです。今や地球全体が人類にとって小さくなったことを感じます。昔横行した天動説を信じる人はいませんが、これに近い思考には良くお目にかかります。亥年であっても猪突キ(豕+希)勇の猛進は避けなければなりません。

その地球各地の国々から愛好者が馳せ参じての「第13回世界剣道選手権大会」で、日本選手団は女子個人・団体、男子個人で立派な内容で勝利を飾りましたが、男子団体で不覚をとり、三位にとどまったのは、海外剣道のレベルアップを喜ぶ反面、日本の剣道界にとっての内外の期待を裏切った歴史的屈辱と受け止めなければなりません。
まもなく冬至から年の瀬を迎えます。皆さんのご健勝を念じます。

台北市での「第13回世界剣道選手権大会」盛会裡に終わる

12月8日より台湾台北市・台湾大学総合体育館で開催された表記大会には全世界から過去最多の44カ国・地域が参加、盛大に開催されました。8日の開会式には陳総統も出席され挨拶頂くなど、台湾側も力を入れて貰いました。

試合は初日の女子個人・団体試合に始まりました。日本選手は格の違いを見せるほどの堂々の試合ぶりで完勝しました。公式試合になったばかりのこの種目ですが、充実ぶりが目立ち、各国の女子剣道の普及ぶりを喜ばしく観戦できました。

2日目の男子個人戦で日本は故障者が出て、3名の参加で心配されましたが、日本対韓国の対戦の準決勝戦には危なげなく勝って日本選手同士の決戦で面目を保ちました。

最終日の男子団体では、報道されているように準決勝戦で米国に逆転負けの不甲斐ない試合で韓国に優勝を許しました。負け惜しみとも言われましょうが、この大会を顧みると各国の充実ぶりが目立ちました。剣道は世界的に広がり、レベルアップしている現状を示した大会と言えましょう。

次回は3年後の8月にブラジル・サンパウロでの開催となります。ここでは日本は全種目に王者の力を示すべきです。大会に当たって骨折り頂いた中華民国剣道協会、審判団、国際剣道連盟事務担当の皆さんにお礼申し上げます。

国際剣道連盟理事会・総会を開催、役員人事も決まる

大会前日に国際剣道連盟理事会・総会が開催され、事務的案件を含め、スムーズに会議を終えました。

人事案件で会長は再任、副会長はカナダのロイ・アサ氏、欧州のアラン・デュカルメ氏は留任、新たに日本の福本修二氏、韓国の金キ(金+其)淳氏が就任しました。また事務総長には、11月に全剣連理事に就任された佐藤征夫氏が選任されました。理事には淺野修氏、塩入宏行氏が日本枠で新任しました。

国際競技団体連合(GAISF)加盟に成功したことは、剣道の国際的正当性が認知されたという自信を各国に与えた好影響を感じました。今後増える出費を賄うための、年会費値上げも異議なく承認されました。

以下例年どおり、年末締めくくりの記事に移ります。

平成18年を振り返る 全剣連・剣道界のニュース

①「第13回世界剣道選手権大会」台湾・台北市で盛大に開催

12月に3日間、44カ国・地域が参加して開催されました表記大会、女子個人・団体、男子個人はそれぞれ立派な内容での連続優勝を果たしましたが、男子団体は準決勝戦で米国に敗れ、初めて優勝を逸しました。韓国が決勝戦で米国を下し、宿願の初優勝。

②「全日本剣道選手権大会」で26歳の内村良一選手初優勝

11月3日に日本武道館で開催された第54回大会で、内村良一(東京)が久方振りの若手優勝を果たしました。また決勝で敗れた古澤庸臣(熊本)も28歳で、平成3年以来の20歳代の決勝戦を展開。さらに優勝の内村、三位の髙鍋 進(神奈川)は、いずれも熊本県出身で、上位を熊本勢が占めて話題を呼びました。

③国際競技団体連合(GAISF)への加盟承認される

欧州諸国の要望が強かったGAISFへの加盟について国際剣道連盟として、申請していましたが、4月の韓国ソウルでの総会において承認されました。これは剣道が世界に正式に認められ、市民権を得たことになり、国の補助なども受けやすくなる国が多くなるなどの効果があります。日本以外の国で歓迎されています。

④政界の剣道議員の巨頭橋本龍太郎氏、坂本三十次氏逝去される

政界において剣道に打ち込まれてきた橋本龍太郎氏、坂本三十次氏が本年相次いで逝去されました。(「まど」に追悼記事)

⑤社会体育指導者認定事業10年を経て完結

平成7年に始められたこの事業、上級までの資格者を生み、初級・中級認定者は5千名におよび各地での指導に力を発揮できる段階に達しました。年度末の3月に記念事業を行います。

⑥大阪市・京都市での行事、ゴールデンウイークに収めて実施

かねて参加者の便も考慮して、全日本剣道演武大会、全日本都道府県対抗剣道優勝大会、一連の審査会をゴールデンウイークの休日に収め、行事の重複も無くすように努力してきましたが、今回は都道府県大会を4月29日の祝日に繰り上げることにより、目標を達しました。

⑦若手対象の「選抜特別訓練講習会」手応えあり

地力ある剣士を長期的見地で養成していくための計画を取り上げ2年目になりました。全国各界から第一期生として60余名が参加した講習会、2年目を迎えての特別訓練を行っています。通称骨太剣士養成計画であり、手応えが感じられ、成果を期待しています。

⑧大阪市で「第1回全国都道府県対抗少年剣道優勝大会」

国の奨励策による行事に名乗りをあげた大阪府剣連主催の表記大会が、9月17日大阪市舞島アリーナで開催されました。38都道府県の参加にとどまりましたが、充実した大会でした。

⑨アンチドーピング対策が始動

一般スポーツで問題が多発しているドーピングの問題への対応が、GAISFへの加盟に伴って、剣道界でも求められています。全剣連はアンチドーピング委員会を発足させ、規則の策定も進めています。また国際剣道連盟も委員会を発足させました。

⑩ホームページコンテスト2006を実施し作品を募集中

多くの剣道団体がホームページを作成・運用され、剣道の普及に活用されつつあります。全剣連ではその質の向上と普及を図るために初めてコンテストを行い募集しています。年明けに審査を行い表彰を行います。優秀な作品が多く、主催者を喜ばせています。
さて心配されている剣道への参入者ですが、18年は若干弱含みながらおおむね前年並みの見通しです。一方年配者の活動は活発の模様で、全剣連の高段者の挑戦はますます増加しました。

昨年の物故者

剣道の発展にご功績のあった次の方々が亡くなられました。謹んでご冥福を祈ります。

山田 則雄氏 福井県剣連会長 1月19日 79歳
坂本三十次氏

剣道範士 元衆議院議員
元官房長官 石川県剣連会長

3月19日 83歳
橋本龍太郎氏

元首相 全日本道場連盟会長
全日本学生剣道連盟会長

7月01日 68歳
山﨑 正平氏 剣道範士 (新潟) 8月03日 83歳

※「第16回全日本剣道選手権大会」において45歳で優勝。
 この年齢での優勝は現在も破られない記録である。

長野 勝明氏 元三重県剣連会長 9月01日 83歳
大祢 一郎氏 剣道・居合道範士(茨城) 平成17年12月18日 97歳
※医師剣道界の長老として実践されました。

昨年の「まど」 の各月の主内容

1月号  第1回中国剣道選手権大会が香港で開催される。
2月号  台北で国際剣連理事会。新年度事業への取り組み。
3月号  新年度の事業と予算の見通し。ハワイ剣道の現状。
4月号  手応えが感じられる選抜特別訓練講習会。
5月号   「剣道指導の心構え」成案に向かって前進。
6月号  GAISFへの加盟の意義 順調に終わった5月の行事
7月号  平成17年度の事業を顧みる。
8月号  中国で初の講習会と審査会。橋本龍太郎氏の逝去を悼む。
9月号  夏の各大会、講習会順調に終わる。
10月号  皇后杯授与に相応しい充実の全日本女子剣道選手権大会。
11月号  力を出しきった試合が見られた東西対抗剣道大会。
12月号  充実した全日本剣道選手権大会。各種の表彰者の決定。

 

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