2007年2月号

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今月のまど

歳末、新年の休みを利用しての片付けや、身の回りの整理などと思っているうちに、早くも松の内を終え寒稽古の季節を迎えました。

暖冬とは言え、全国各地で例年のように厳しい稽古が展開されていることでしょう。
剣道界の華とも言える寒稽古。多くの剣士が鍛錬で新年の錬成の口火を切って一年の計を立てて頂きたいものです。

元日の新聞論調に見る

昨年に比べて力の入った社説が見られるので、剣道人としてご参考になろうかと一年休んだ記事を復活します。意見はありますがここでは述べません。現状での心配される状況を提示し、取るべき方策や方向を提示するのが元日の社説に共通した展開です。

まず当面の問題意識は

最も具体的なのは読売です。「北朝鮮」による核の脅威への国際的対応が遅々として進まぬ現状を憂い、各国の脅威感の違いにいらだちを持つ日本は核保有すべきとの意見を排し、米国の核の傘に依存する他ないが、日米同盟の実効性と危機対応能力を高めるために、日本が十分な責任を果たせるよう「集団的自衛権の行使」を可能にすべきと主張します。さらに非核三原則のうち「持ち込ませず」についての論議を封印するなとします。

幅広く「地球と人間の危機」として地球温暖化による災害を捉え、二酸化炭素削減を唱えるのが朝日ですが、ここではエネルギー消費大国米国で、二酸化炭素削減のため決められた京都議定書に背を向けた米国ブッシュ政権を批判します。そしてブッシュ政権が軍事力を過信して招いた中東の危機に言及します。

東大生への調査を基に、若者に未来への期待が無い現状を憂い、団塊の世代の時代との比較から、若い世代が希望を持てない国に未来はないと訴えるのは東京です。また、産経はかつての日本は子供の楽園として世界で認められていたのに、その子供を育てた親たちはどこに消えたのかと、家族の絆が薄れたことを憂いています。

日経は、経済が世界的にグローバル化を迎えている現在、対内直接投資や外資系企業の雇用、生産への寄与度などを総合した国際化指数で日本は先進国中大きく引き離された最下位にあることを取り上げ、投資開放度が低く、国際心が培われていないことを指摘します。

今後への対応について

「もっと前へ」を掲げている毎日は、日本には世界一のものが幾らでもある。これをもっと増やそうと提案します。世界一大きい大根の桜島大根、世界一長い映画シリーズ「男はつらいよ」に始まり、工業製品だけでなく世界一の長寿国日本など広い分野で例示し、豊かさを維持するために「日本発の価値」を増やすことの必要を説きます。そのために失敗しても落ちこぼれにならない丈夫な社会的「安全ネット」が必要でさらに「世界一国民を大事にする政府」が必要であると主張します。

安全保障を説く読売は、財政基盤がその前提であり、国の債務の巨大なこと、高齢化社会への突入の現状を踏まえて少子化対策の大胆な実施をすべきであるが、財政基盤充実のため避けられない消費税増税の議論を早く始めるべきとします。

朝日は、憲法第9条改正などによる軍事への傾斜で無く、実績ある戦後日本の得意技を生かして「地球貢献国家」としての役割を果たして行くべきと述べます。

つぎに東京は新しい人間中心主義で今後進むべきで、雇用、福祉、教育への国のGNP比支出が、先進国中の最下位グループにある現状を改め、格差の是正をする新しいヒューマニズムが息づく社会を選択すべきとします。日経は経済的鎖国から覚めて現状打開をして、懐深く志高いグローバル国家にしたいとします。

最後に産経は、家族の共同体意識再生が日本再生の鍵であるとし、この意味で改正教育基本法の成立を価値ある第一歩と評価し、当たり前の内容の法律改正に半世紀以上もかかった風土を訝ります。内外の環境厳しさを加える平成19年、日本は明治維新以来多くの危機を乗り越えてきた底流にあった家族の絆を思い起こすべきで、この1年をもう一度、世界で一番可愛い子供たちの笑い声がはじけるような国にしたいと結びます。

動き始める教育改革を剣道界への追い風にしよう

年末に成立した改正教育基本法に続いて、学校教育の在り方、教育行政の刷新などに手を付けられるでしょうし、社会もこれを期待します。もちろん剣道自体の教育が学校で強化されるという動きに直結することは無いにしても、バランスとれた知育、体育、徳育の展開、生涯教育の重視などの機運が生まれてくることに期待すべきでしょう。

教育基本法に新たに盛られた、「伝統と文化の尊重」「それをはぐくんできたわが国と郷土を愛する」などの教育目標は、30年前に先人により全剣連で制定された「剣道理念」、「剣道修錬の心構え」の内容と正しくピタリのものです。前記の元日の社説にあった、日本で作られた世界一のものに当然取り上げられてよい剣道を国内外で振興することに弾みがつく追い風として、お互い一層努力し成果を挙げる年としましょう。

新年度事業計画への準備本格化

例年どおり4月から始まる新年度の事業計画と、これに表裏の関係にある収支予算の編成準備が、年明けとともに本格化します。

すでに申し上げているように新年度は、剣道の内容、愛好者の数などの質、量両面で、事業の成果の現場への浸透を進める年としたいと存じます。教育改革への流れの風を背に、剣道理念の各論として進めた「剣道指導の心構え」も近く出来上がりますので、指導、普及への各般の道具だて、準備体制も不十分ながら準備されたとして、実行面で成果を収めるための努力を、剣道界として強めて行きたいと存じます。

従って全剣連としては各剣連のこの面での活動の強化を期待し、事業面での援助体制を強化していくべきと考えます。本年は一昨年の愛知万博、昨年の世界大会という、勢力を注ぐ大きなプロジェクトの予定がありませんので、全剣連設立55周年の年として、剣道界の内容充実を目標として掲げたいと思います。

具体的施策はまずそれぞれの委員会、担当役員において検討して立案を進めますが、継続している事業にあっても、内容の充実のため、改善、強化を要する部分が目に付きます。また55周年記念事業としてはお祭り騒ぎを行わず、構想として浮かんでいる「剣道国勢調査(仮称)」をまず実行したいものです。

前提となる財政ですが、少年人口の減少は、中高年の活動活発化によって補われることを期待し、全剣連の収入については大きな落ち込みは免れそうですが、普及活動などの事業の進展、資金運用の改善による収入の増加などを図ります。一方で一般支出の抑制を続けますが、一部過去の蓄積に頼ることは避けられないと予測します。またこの際少子化の影響が大きい各剣連の事情も考慮し、講習の援助などに力を入れていくことが必要と考えます。

断  片

①HPコンテストに多数の応募

初めて全剣連が行ったホームページコンテストへの応募は昨年末に締め切られましたが、予想を上回る149件の申し込みがあり、関係者を喜ばせています。2月に専門家を交えての審査会を行い入賞者を決定し『剣窓』4月号に発表されます。

②昨年の全剣連HPへのアクセス過去最高を記録

7年前の平成11年暮れに運用をスタートさせた全剣連HPへのアクセス数は、前年を50万件上回り、531万件を記録しました。400万台を抜け出すのに3年かかったわけですが、一層の内容充実を進めるべく担当者は張り切ってます。

③初段取得者数減少の兆候

平成18年の全国の初段取得者数は42,556名で、前年を3千名下回った集計結果が出ており、全国的に退潮の傾向が見られます。ただ20近くの剣連は、前年と同等、または上回る状況で頑張っています。詳細は8頁をご覧下さい。

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