2007年12月号

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今月のまど

秋本番の季節を迎えました。

山は紅葉に彩られ、次第に平地に及んで来ましょう。「秋の夕日に照る山紅葉……」戦前の小学校唱歌が思い出される季節です。

剣道界も秋口からいくつもの大会を終え、文化の日の全日本選手権大会の盛り上がりで山を越しました。余韻の中、一連の審査会の時期を迎えます。

充実した試合に沸いた全日本剣道選手権大会

この大会に執行部が注視する所は、まずは全国各地から選抜された剣士たちが、日本の剣道の技術レベルを示す内容ある試合を展開してくれること、また今後を期待できる上り坂の若手が、どの位台頭してくるかと言うことです。

64名の選手の平均年齢は29.4歳、剣道の力が充実するのは、30歳前後と言われているのを反映しています。出場選手の最高年齢は40歳、最年少は23歳、学生には狭き門である実態を示します。

ほぼ半数を占める20歳代の選手の中に、全剣連が選びだして訓練し、前年度に終了した選抜特別訓練生(通称骨太訓練生)の中から7名が、また訓練を始めている第2期生から2名が出ており、また3名が優秀選手として表彰されたのはまずは心強い所です。

選手の職業では54名が警察官であり、テレビで放映されたベストエイトの試合はすべて警察官が占めました。一般組では齋藤(滋賀県)、鹿野(山梨県)、髙村(東京都)がいずれも2勝して気を吐きましたが3回戦で退きました。初出場の選手は30名を数えましたが、そのうち木和田選手(大阪府)が3位に入賞、網代選手(兵庫県)が優秀選手に選ばれるなど敢闘しました。

さて各地からの精鋭が激突するこの大会は、5分で勝負がつかない試合が多く、結果的に一本勝負が多くなります。4回戦までの60試合の記録を見ると、二本取った勝負はわずか3試合、大部分が一本で決まり、しかも多くが延長になっての勝負でした。

今大会では準決勝戦から試合時間を10分にしましたが、勝ち進んできた選手たちとはいえ、一本を取ったあとの勝負を狙う両者の角逐を通じ、選手権大会らしい試合としてどなたも堪能されたことでしょう。三本勝負を建て前とする剣道の試合時間は、これまでの各大会の結果を振り返り、今後も検討、改善を図っていきます。

さて大会の結果は寺本選手(大阪府)が逆転で初優勝を決めました。髙鍋選手(神奈川県)は優勝を逸しましたが、切れ味の良い試合ぶりで紙一重の時の運というべき結果でした。前年は若手が進出しましたが、今年はベテランが巻き返した感じです。戦評は他に譲りますが、1回戦からダレた試合がなく、今後に期待が持てる充実した大会だったと思います。健闘された選手各位、審判の方々、運営を支えた多くの方の尽力を多とするものです。

8千名が挑戦 秋の大型審査始まる

11月後半に行われる全剣連の六、七、八段の一連の段位審査会に挑戦される方は昨年を上回る人数となっています。

11月10日の教士筆記試験に始まり、17、18日の名古屋での剣道七、六段審査と続き、26、27日の日本武道館での八段審査、続く東京武道館での七、六段審査、最後は30日の称号審査で終わります。

剣道六、七、八段を通じ、いずれも昨年を上回る数となり、合計8千名を越す審査が展開されます。入学試験と異なり、定員のない資格審査です。公正、妥当な審査でありたく、全剣連も万全を期します。受審者のご健闘を念じます。

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特別功労者に松本良諄氏、7名に功労賞、全剣連表彰者決まる

本年度全剣連表彰は、選考委員会の推薦に基づき11月2日の理事会において決定されました。全剣連副会長、全日本学生連盟会長、大阪府剣連会長などを長年務められ、剣道の振興に尽力された松本良諄氏を剣道特別功労者に、また7名の方に剣道功労賞の贈呈を決定しました。

また各団体からの推薦に基づく剣道有功賞を67名の方に贈呈することも決定しました。この中にあって長年大韓民国において剣道の奨励、また剣道を通じて日韓友好に努められた李 虎岩氏に有功賞を贈呈することになりました。

なお4年目となる少年剣道の教育奨励賞は全国309団体(一部個人)に贈呈されます。

特別功労者表彰、功労賞贈呈は、12月1日東京九段会館での表彰式で行われ、有功賞、奨励賞は各剣連を通じて贈呈されます。

収入停滞が目につく上半期の収支

本年度9月までの上半期の収支状況が纏まりましたが、少し気に掛かる点があります。それは経常収入の6割を占めている登録料の伸び悩みです。

これは昇段、昇格によって段位、称号を取得する人の減少を意味します。初段以上すべての段位取得者数がわずかながら前年を下回っています。

先に記したように、月末の審査への受審者数は前年を上回ることが見込まれています。即断はできませんが、注意深く推移を見るとともに、節約に心掛けていきます。

称号・段位審査の実施に留意すべきこと②

前回に続いて審査結果の情報開示と結果の評価を取り上げます。

受審者の参考にするために、規則に定める「合否に関する総括的事項」の範囲内で、年齢別、地域別合格者数、また各受審者が合格と評価された数などの統計を『剣窓』で公表しています。また各人の審査成績については、受審者の審査受付時に、はがきによる結果通知の申し込みを受けています。

以上の外部への発表のほか、審査員に対しては、審査会前に行う研修に際し、前の審査会における審査員の配点の状況などを、説明して審査の参考にして貰います。

以上の情報開示に続いて実施することは、審査結果の評価、解析を行い、以後の審査の改善に資することです。これは審査委員長、その他審査役員など、限定された幹部の仕事になります。すでに審査会場において合否を決めるための集計とチェックは行っていますが、終了後に結果の再確認、審査の内容分析を行うことが必要です。

ここでは審査会場別の審査結果のバランス、審査員が他と著しく異なった評価が行われていないか、例えば極めて高い、または低い合格評価が行われていないか、また他の審査員と異なった判定が著しく多い審査員の有無、審査の進展に応じて、ムラの多い判定が行われていないか、などの点をチェックします。

調査の結果、改善を要することがあれば、前述のように研修の際、審査員に知らせる、さらに極端な場合は、審査員選考委員会に提示することになります。ただ近年は審査内容、審査の判定は着実に向上しており、処置を要す事例が発見されることはまずありませんが、過去においては、絶無でなかったと申し上げておきます。

以上は全剣連の審査について申し上げました。地方剣連に委任の五段以下については、全剣連はすでに調査を行い、全国的整合性を高めるために、改善を要する点を発表しました。すでに審査内容の向上について各剣連の活動が進められていますが、審査を妥当、公正に行い、受審者に信頼されるよう内容を全国的に高めるための努力を今後とも進めたいと思います。

断   片 「選手権大会こぼれ話」

①大阪府代表3名が揃って入賞を飾ったのは珍しい記録です。
また決勝で戦った2名はいずれも熊本県出身ですが、これが前年も同様で、2年続いたのも珍しいことですが、偶然とはいえないかとも思います。

②大会入場券販売数は5,900余りで、前年をわずかに下回りました。アリーナ席は例年ほぼ完売ですが、一階席は500ほど売れ残りました。例年のことですが剣道愛好家の協力を得たいものです。

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