時期遅れの18号台風も通り過ぎて、秋の好季節を迎えました。剣士の腕試しとなる大会がつぎつぎと繰り広げられます。歴史ある全日本東西対抗剣道大会を皮切りに、全日本女子選手権大会、国体剣道大会と大事な行事が続き、その間学生、実業団、官公庁、警察などの大会が織り込まれ、11月3日の全日本剣道選手権大会と繋がっていきます。
また全日本杖道大会(神奈川県横須賀市)、全日本居合道大会(長崎県島原市)も行われます。
秋は実力養成の時期でもあります。社会体育中級(福島市)、初級(青森市)があり、延期されていた女子審判講習会(兵庫県姫路市)も行われます。また各剣連で全剣連後援の講習会が続きます。
注目されるのは、男子・女子の強化訓練が、世界剣道選手権大会終了後の新たなメンバーによって、千葉県勝浦市、姫路市で始められることです。
政界も新しい内閣ができ、これまでの政策の見直しの動きが活発ですが、長期にわたり日本を支える教育、人造りの領域では、あと戻りをしないで、着実な行政が続くことを念願しています。
55回目を迎える歴史あるこの大会、東西で選ばれた名剣士が、本年は埼玉県越谷市に集結、9月13日に対抗試合が展開されました。試合はこの所定着した方式で、女子5名、男子35名による東西対抗の対試合で行われます。女子の試合時間は5分ですが、本戦といえる男子の試合は10分、いずれも引き分けなしということで定着しました。試合方法は以前は抜き試合が取り上げられた時機もありましたが、ここ20年は対勝負で定着しています。勝負を重視すれば、抜き勝負も面白いのですが、近年は東西対抗の形を取った高段者による格調の高い剣道試合の内容を期待する大会として、一般の支持を得ているものと見ています。その観点から試合時間を十分にし、勝負が付くまで行い、日本の剣道のレベルを示して貰う現行の方式は適当であると言えましょう。
そこで他の大会には見られない、勝者だけでなく敗者も併せて表彰する優秀試合賞を設けていることの意味が見えると思います。
さて12年前から行っている5名の選手による女子の部は、勝負は通算で西軍が優勢で、今年も西軍が東軍を圧倒しましたが、内容的にはレベルの高い試合が展開され、前座とされる言い方はそろそろ返上して良いかと思われました。
男子大会は、まず3組の六段戦には3名の世界大会出場者がおり、先陣として生きの良い試合を展開してくれました。ここでは東軍が西軍を圧倒しましたが、続く七段剣士では『剣窓』の予想通り、好試合を展開しつつ、西軍が勝ち越し、後半の教士八段での東軍挽回成らず、範士の試合に入る前に西軍の勝ちが決まりました。
2組の範士の試合は、迫力ある重厚な試合が展開され、大会を締めくくる、さすがに範士という内容でした。副将戦の濱崎 満範士と末野 栄二範士の対戦が、優秀試合賞に選ばれ、東軍の大将梯 正治範士が優秀選手の表彰を受けたのは、さもありなんと共感を呼んだことと思います。
大会を顧みると、それぞれの剣士が力を発揮された玄人好みの立派な大会であったと感じました。
第48回の歴史を重ねた標記大会は、9月27日に藤枝市の静岡県武道館で開催されました。皇后盃の獲得を目指して馳せ参じた64剣士のうち、初出場26名、高校生2名を含む学生が17名おり、10回以上出場者3名を含む、平均年齢25歳と、男子の選手権大会と趣の違う大会であり、上り坂にある女子剣道の内容に期待がもたれました。特に先日の世界大会で強みを見せた女子代表10名の中から、出ている7名の活躍にも関心が持たれました。
大会を顧みますと、内容的に確かにレベルの向上も感じられました。特に1回戦の試合内容に見られます。これまでの大会では、これが女子選手権の代表かと思われる試合も散見されましたが、今年は目を離せない熱戦が続きました。
試合が進みますと、やはり世界大会を目指して錬成し、1カ月前の大会にピークを示した世界大会出場者は強みを発揮し、ベストエイトに6名が残り、さらに準決勝戦では全員そのメンバーが占めることになりました。
中で目立ったのは女子選手団主将で、過去3回の優勝を記録している村山 千夏(埼玉)でした。ブラジルで不調に泣いた村山は見事に立ち直り、見違えるように1回戦から積極的に試合を進め、長身からの面技を生かし、準決勝戦で新里 知佳野(新潟)に、面を許しただけで、2回戦を除き二本勝ちで危なげなく、これまで果たしたことのない4回目の優勝を飾りました。
さて全剣連としては、すでに女子剣道における大会の在り方などについて改善を重ね、その発展を図って来ています。この大会もさらに充実したものになることを期待しています。
また大会の沿革は昨年のこの欄で振り返りましたが、各地の開催地にはこれまでもお骨折り頂いて来ています。しかし全剣連としては次にお願いする開催地を模索する時期かと思っています。
今年の国民体育大会は新潟県で開かれ、剣道行事は長岡市栃尾で行われました。私の国体への出席は、これが日本体育協会の主催で全剣連は主管の立場にあること、また主に平日に行われる事などを口実に、怠けていたのですが、今回は心を入れ替えて、成人男子の最終日の5日に参上しました。
栃尾は長岡市といっても、近年合併された町で、新幹線長岡駅から東方20キロ以上離れた所で、長いトンネルを通って行く山間の町です。ここの体育館が会場で、10月3日から5日までの日程で行われました。役員・審判員などは長岡市のホテルから通うなど、便利とはいえない場所でした。
国体ではその勝利のため、開催地が何年も前から、県を挙げて努力します。また剣道の場合、予選突破を要する、少年男子・女子(高校生)、成人女子に出場可能なこともあり、強化に身が入ることもあって、毎回開催地が総合優勝するのが常でした。
今回もその例に漏れず、成年女子は2位になりましたが、少年男子・女子に圧勝、全県の出場可能な成人男子も勝ち上って行きました。
ご承知と思いますが成人男子5名の構成は、年齢別に組み立てられており、先鋒の25歳までから、10歳ずつ上がっていき、大将は55歳以上となります。この組み合わせに人材を揃え、強化するのは、県民挙げての後押しが無いと難しいと思われます。
新潟県は福岡県、兵庫県、昨年優勝の大分県、続いて東京都を下した岡山県をつぎつぎと破り、決勝戦で京都府を圧倒して堂々優勝を飾り、総合優勝を果たしました。
剣連の努力もさる事ながら、県を挙げての後援による勝利でした。
北の丸の日本武道館が昭和39年に完成して45年ということで、その記念行事と併せて標記行事が、10月10日に日本武道館で開催されました。簡単な式典と、武道協議会などに加わっている各武道団体の短時間の演武披露が主体の行事でした。式典後ホテルに会場を移しての、45周年祝賀会が行われました。
日本武道館については、開館50年近くを経て、老朽化している施設の近代化が最大の課題です。北の丸公園に偉容を誇ってはいますが、付帯設備、内部の機能をみれば、50年前の施設の近代化が全く遅れています。なんとか措置を講じて欲しいものです。
2016年のオリンピック開催が流れたことは痛手ですが、剣道界としても、3年ごとの世界剣道選手権大会招致の問題を抱え会場として最有力候補と考えています。武道各界とも協力して近代化を進めたいものです。
9月12日の理事会での決定を受けて、新メンバーによる委員会がつぎつぎと開催され、構想を練っています。11月2日の理事会までに、検討事項が纏まることを期待しています。
10月9日に本年度表彰選考委員会を開催。各剣連から推薦された剣道有功賞候補者につき選考を行い、59名の贈賞の推薦が決まりました。また続いて剣道功労賞について選考を行い、5名の候補者を決定しました。候補者は11月2日の理事会で決定され、剣道有功賞はそれぞれの剣連から、剣道功労賞は、12月5日に行われる贈呈式で贈賞されます。
会 長 武安 義光