2013年1月号

年間購読のお申し込み

もくじ

  • ポスト60年の初年に当って思う/武安 義光
  • 平成24年度剣道功労賞贈呈式・第11回剣道文化講演会開催
  • まど・306回/武安 義光
  • 審査会特集
    □ 称号・段位審査会合格者
    □ 剣道八段審査会の分析
  • 杖道七および六段審査会(東京)要項
  • 第31回全日本女子学生剣道優勝大会/藤原 崇郎
  • 第61回全国青年大会剣道大会
  • 第22回関東女子実業団剣道大会
  • 全剣連後援剣道講習会・全剣連講師派遣事業・全国剣道指導者研修会
  • 〈2012年日印交流60周年記念事業〉インド共和国派遣日本武道代表団剣道報告/猪狩 保光
  • ヨーロッパ居合道大会および講習会・審査会/草間 じゅん壹
  • 第39回全日本杖道大会を終えて/前原 敏雄
  • 第47回全日本居合道大会を終えて/高橋 文也
  • 随筆・武安会長一行のインドネシア訪問に同行して/浜田 直樹
  • 平成24年月刊剣窓総目次
  • 年表・全剣連の歩み この10年
  • 中村龍夫先生のご逝去を悼む/大谷 正俊
  • 国際関係コラム・120回

年頭所感

ポスト60年の初年に当たって思う

takeyasu2011.jpg

明けましておめでとうございます。

昨年の日本社会は、大震災の復興なかなか進まず、経済は世界経済の影響を受け全般的に低調、原発停止の影響により化石燃料の輸入が増大したことで、大きな貿易赤字がこれに輪を掛けた経済活動不振の年でした。

外交関係も思うに任せず、政治の低迷とあいまって日本はこれまで蓄積してきた国力を食いつぶしての2流国家に成り下がる危機に直面していることが懸念されます。現在進行している選挙結果で、国の立て直しへの道が開けることを念願します。

さて剣道界の動きはこれまで述べた社会の動きの中、設立60周年の年に相応しい順調な歩みを進み得た年と評価しています。

まず平成24年4月から始まった中学校体育における教育科目変更で、武道必修化が実現しました。全体の3分の1の学校で、剣道が採用されたのは、まずまずの成果で、関係の方々の努力が実ったものと見ています。今後教育内容の充実を図り、成果を上げる努力を進めたいと思います。

また同じく平成24年4月から政府の公益法人制度改革の方針に従って全剣連は「一般財団法人」に改組して出発しました。この際寄附行為から改まった定款について、細かく検討を加え、運用の基本は現在と変わらぬ中で、これからの社会に適応できるよう改善を図りました。

海外活動では、5月イタリア・ノヴァラ市での世界剣道選手権大会の運営を行い、成功させました。そして2015年の次回大会を東京で開催することが決定されました。

さて一般業務では、教育・指導を重点として進めましたが、数年前の方針に基づき、指導を進めるに当たって、重心を地方に傾けて行って来ました。すでに20年近い実績を持つ社会体育指導員資格付与の養成事業ともあいまって、この方針の成果は地方剣連の指導力の向上として、ゆっくりではありますが、実現しつつあるものと見ており、さらに今後の発展を期待しております。

ここで事務的分野に触れますが、コンピュータ利用の進歩による審査業務の能率向上も定着しましたが、このほかの事務処理分野での全剣連能力向上も進んでいます。また広報分野においても実績が上がりつつある事が見られます。

これらの分野での能力向上は、専門委員・事務局員の努力によって積み上げられたもので、今後とも進めていく事が必要であり、かつ期待されています。

これらの前進はポスト60年の初年度に踏み出すに当たり、更なる充実を図りたいと思います。

昨年はオリンピック大会の年で、スポーツ界、さらに国民が熱狂しました。この点、全剣連は一般のスポーツ団体と異なって、例えばオリンピックに加わって、メダルをとることを目標にしません。事業遂行の目標は国民の心身の鍛錬を進め、国民の人造りに貢献することにおいています。とくに剣道であればこそ可能となる、生涯修業を広めていこうとしています。しかし地力をつけることを軽視するわけではありません。試合での力をつけることは重視しますが、一方で指導・教育を全剣連事業の最重点として、国内剣道のレベルアップに努力します。

また海外の剣道普及にも傾注し、剣道の恩恵を受ける人を海外にできるだけ増やすために努力していきます。このため外国人指導者の講習や指導者の派遣を充実させており、国際剣道連盟の加盟国・地域は増加しつつあり、現在52に及んでいます。

この分野への活動を全剣連は重視し、今後も幅広い活動を展開したいと思っています。各方面のご理解とご支援をお願いして年頭のご挨拶とします。

会 長 武安 義光

今月のまど

暮れは総選挙とこれに基づく政府の発足で締めくくられます。地盤沈下により先行きが心配な国勢の将来を安定させる政府ができる結果になることを念願します。

この記事を作成しいているのは師走の中旬。年末の所用が重なって気忙しい時ですから、この欄は新年の空気を巻頭言に任せて、例年の構成で平成24年を締めくくらせて頂きます。

秋の審査会充実した内容で終了

全日本剣道選手権大会の後の大きな行事は、一連の審査会です。先月号で大型審査として紹介しましたが、名古屋・東京を通じて剣道八・七・六段審査会は合計6日にわたって行われました。高段に挑戦する剣士の立合いぶりは気迫十分、例年に無い内容を示しました。

記録は記事で御覧頂きますが、数字を掲げます。六段審査―受審者3,201名、合格者591名、合格率18.5%、七段審査―受審者2,603名、合格者412名、合格率15.8%、八段審査―受審者1,851名、合格者8名、合格率0.4%(七・六段の合格者数は再受審合格者を除く)。

結果を見ますと、七・六段についてはかなり高い合格率を示しています。八段の審査は厳しく、一次・二次を通じて、実技合格者は1%を割る状況ですが、審査を見た限りでは、抜きん出た剣士は多く無かった印象を反映したものといえましょう。実力を高めての捲土重来を期待します。ともあれ受審された方の総計は7,650名あまりになりましたが、受審者だけでなく審査員、現場の担当者と大勢の力が結集した大審査会でした。

元副会長中村龍夫氏逝去される

元日本鉱業(株)社長を務められ、全剣連では理事・副会長・審議員・相談役に就任頂いた中村 龍夫さんが亡くなられました。中村さんは旧制浦和高校出身、剣道部で修業されました。剣豪社長が輩出した日本鉱業に入社、社長に上りつめられました。社内の剣道を奨励され、社内の道場の門戸を部外者にも開いた「虎ノ門剣友会」では、筆者も長年ご厄介になりました。実業団剣連会長を務められ、全剣連では副会長の際、称号・段位制度の改革に取り組み努力されました。その後は相談役として、剣道界の発展に終始努力頂きました。ご冥福を祈ります。

平成24年を振り返る全剣連・剣道界の主なニュース

①全剣連設立60年を迎え、諸行事を行った

昭和27年、日本は独立を回復して、制限されていた剣道の活動を開始しました。全国有志の発意によって「全日本剣道連盟」が発足、ここに60周年を迎えました。冠大会など記念行事は終えましたが、式典などは年を越します。出版も年度末まで続きます。

②東日本大震災被害に対する義援金を締めくくる

平成23年3月の、大震災に対する義援金募集活動を締めきり、被災地の関係剣連を通じて贈呈しました。内外から寄せられた浄財は、海外からのものを含め、31,048,932円に達しました。

③公益法人制度改革に伴い、一般財団法人として発足

昨年度に申請、認可を得て、全剣連は4月1日より一般財団法人として出発しました。基本的には業務の実施は変わりませんが、定款は内容的に整備されました。評議員は増員され、従来の都道府県代表だけでなく、関係団体の推薦者・学識経験者を加えました。

④中学校体育授業に武道が必修科目とされ、4月より実施される。

かねての予定通り、武道が必修科目として新年度より実施されました。約3分の1が剣道を選んでいる模様です。

⑤世界選手権大会イタリア・ノヴァラ市で開催 日本全種別で優勝

5月28日より、過去最高の48カ国・組織が参加して3日にわたって開催されました。日本は男子の部では、韓国選手と接戦するもこれを退け、安定した女子と共に4種別で勝利を飾りました。

⑥次回世界剣道選手権大会の東京開催が決定

大会前に開かれた国際剣連の総会において、2015年の大会開催地として立候補した、日本での開催が決定されました。会場は日本武道館、時期は5月になる予定です。

⑦全日本剣道選手権大会・大阪木和田が優勝・高鍋3連覇成らず

11月3日に開催された全日本剣道選手権大会において、準決勝戦で木和田 大起選手が高鍋 進選手(神奈川)を破り、さらに決勝戦において内村良一選手(東京都)を下して初優勝を遂げました。高鍋選手の3連覇は実現しませんでした。

⑧秋の剣道審査会―挑戦者8,000名に迫る大型化

名古屋・東京を通じての剣道高段者の審査会、例年にも増して力強い立合いが延べ6日間にわたって展開されました。剣道界の充実を見せてもらいました。

⑨全剣連剣道人記章等の権利確定

剣道人バッジなどで全剣連が使う標識のうち、記章について商標権が認められなかったので、拒否に対して不服審判を申立てていましたが、逆転審決を得て登録されることになりました。

⑩初段取得者久方振りの増加

初段を取得した者の数が回復、3年振りに4万の台を超えました。受審資格を満13歳と改めたことが大きく影響しています。

番外「まど」通算300回に到達

昭和62年8月号より執筆を始めた「まど」(当時のタイトルは「全剣連の窓から」でした)が本年7月を以て、300回を数えました。ここまで続いたのは激励を頂いた愛読者各位のお陰です。

敬弔 昨年の物故者

多田 昇氏 香川県在住 前香川県剣連会長 12月13日 74歳
鍵田 忠兵衛氏 奈良県在住 奈良県剣連会長 12月14日 54歳
尾坐原 實雄氏 剣道範士 茨城県在住 元茨城県剣連会長 04月09日 86歳
植田 一氏 剣道範士 香川県在住 香川県剣連名誉会長
全剣連剣道特別功労者
04月27日 98歳
菊前 博氏 剣道範士 千葉県在住 千葉県剣連元会長 05月14日 90歳
野正 明和氏 剣道範士 居合道範士 福岡県在住 福岡県剣連相談役 06月02日 90歳
甲斐 清治氏 剣道範士 宮崎県在住 前宮崎県剣連理事長 10月22日 71歳
中村 龍夫氏 東京都在住 全剣連相談役・元副会長
元日本鉱業(株)社長 元実業団剣連会長
11月18日 86歳
鬼倉 國次氏 剣道範士 千葉県在住 医師 全剣連剣道功労賞受賞 12月03日 94歳

 平成24年の「まど」の内容

新年巻頭言 ・「設立60周年を迎え、剣道1層の普及・発展を進める」
1月号 ・平成23年を振り返る
・全剣連・剣道界の主なニュース。
2月号 ・年頭の新聞論調に見る
・剣道初段取得者が増加
3月号 ・24年度事業計画の策定
・事業計画の中核に位置付けられる教育と講習
・社会体育指導員講習会―堅実に広まって展開
4月号 ・試合・審判についての事業の沿革
・24年度重点に位置付けられる教育と講習
5月号 ・事業の口火を切る東西での中央講習会
・増加傾向にある称号・段位受審者数
6月号 ・伝統の色を濃く残しつつ終えた演武大会
・春の大型審査無事に終わる
7月号 ・新定款に基づく初の理事会・評議員会開催
・イタリア・ノヴァラで15WKC開催 日本全種別で優勝
・次期大会の東京開催決まる
・「まど」掲載300回を迎えて
8月号 ・設立60周年記念事業の構想
・教育・普及事業における講師要員研修の役割
9月号 ・全日本少年・少女剣道錬成大会
・外国人剣道指導者夏期講習会
10月号 ・堅実な展開の全日本女子剣道選手権大会
・事業調整連絡会議の運営
11月号 ・東西対抗大会・57年ぶりに宮崎に
・インドネシアの剣道を育てたい
12月号 ・古豪が力を発揮、若手の台頭を許さず―木和田、高鍋の3連覇を阻む
・剣道人バッジなどの商標権が確定
・秋の剣道高段者の審査に8,000名が挑戦

会 長 武安 義光

ページトップへ

  • 全日本剣道連盟公式Facebookページ
  • 全日本剣道連盟公式Twitterページ
  • 全日本剣道連盟公式Youtubeチャンネル