初夏の候を迎え、剣道界も事業に、錬成にと本格的に取り組む時期に入りました。試合では年度の初めを飾る全日本選抜剣道八段優勝大会があり、続いて戦後全剣連が設立されて初めて取り上げた全国大会である、全日本都道府県対抗剣道優勝大会が、大阪市中央体育館で開催されました。
次に舞台は京都に移り、例年通り全国の高段の剣道愛好者が集い、歴史ある全日本剣道演武大会が展開されますが、一方、剣道高段の審査会が4日にわたって行われます。1週間後に行われる名古屋市での剣道七・六段審査に挑戦される人を合せると、延べ1万人に近い方々が参加する大きな行事となっています。
国内情勢に目を移しましょう。1年前とは様変りとなったことは申し上げるまでもありません。総選挙の結果、政治も主役が入れ替りました。経済情勢も大きく変わり、円相場が急速に動き、1ドルが80円を割って定着することが心配されていた1年前から、とうとう100円を突破する円安に振れました。また新内閣の経済政策への期待により、低迷していた株式のダウ平均値は、5年前のリーマン・ショック前の相場を突破する高騰振りです。
このような状況は長らく低迷していた経済が、米国経済の回復の動きが濃い世界情勢や、沈滞から上昇への対策を積み上げていた国内企業の活力が、金融緩和の政府の方針と相俟って、内外呼応して復活の方向に向かい反応していると見ることができましょう。
さて円安の進行は競争力の低下に悩んでいた輸出関連産業に好影響を与え、好決算が次々と発表されています。いずれ事業の進展のための投資に結び付き、景気の好転に一役買うことになりましょう。
しかし円安は喜んでばかりいられません。原子力発電の停止による化石燃料使用の火力発電の増加に伴い、輸入の増加によって貿易収支の悪化が目立っています。停止中の原子力発電所の安全性を早急に確認して稼働させることが急務です。
確かに内向きに過ぎた前民主党政権から、成長を掲げた自民・公明政権への移行があったことの結果が、世界情勢にもマッチしての、最近の経済の動きと見ますが、今後の政策が適切に進められ、国勢の立て直しの実現を期待したいものです。
さて内外の諸情勢予断を許さぬものがありますが、剣道界としては既定の方針に基づき、剣道を通じての人造りを目標として努力を重ねていきたいと思います。
新年度の初めに積み重なっているともいえる多くの行事には多数の方に参加頂き、いずれも順調に終えることができました。執行部としてもまずは一安心、そして参加された多くの方に充実感を持ってお帰り頂いたと思っています。以下、個別の行事に触れていきます。
明治村剣道大会を引き継いで、第11回を数える標記大会、年度事業の初めの大会として、名古屋市中村スポーツセンターで4月21日(日)に開催されました。今回初出場の石田利也教士が優勝を飾りました。昨年優勝の谷 勝彦教士(群馬)も健闘し、この大会初めての連覇に挑みましたが、石田の堅陣に退きました。
多くの好試合の中で光ったのは、準々決勝で石田に挑んだ大澤規男教士(埼玉)の試合でした。双方一本ずつを取った後の角逐は、本日随一といえる好試合と見ました。
この大会への出場選手は八段取得後5年以上・年齢65歳までの枠内で選考されます。やはり若手の方に分が良い印象を受けます。
4月29日(祝)のゴールデンウィークの劈頭を飾る大会。国体開催を控えた東京都が、充実した戦力で勝ち進み、決勝戦で福岡県を下し、12回目の優勝を果たしました。
地元であり、これまで15回と最多の優勝回数を誇る大阪府が、早々と1回戦で沖縄県に敗れたのは番狂わせというべきでしょうが、兵庫県・京都府・奈良県などの関西勢も振るわず、僅かに和歌山県が、3回戦に顔を出しただけという不振で、大会終盤の盛り上がりに欠ける結果をもたらしました。
過去5回の優勝を飾り、上位入賞の常連である福岡県も充実した試合振りで、決勝戦に進みましたが、及びませんでした。
この試合の選手構成は、高校生・大学生を前陣に、あと職業別と年齢を組み合せたものになっています。4年前から、男子だけの大会になりました。選手選定・強化活動が難しい構成ですが、各県の総力戦として育てていきたいものです。
今年は久方振りに天候に恵まれた大会でした。ただ5月2日(木)の大会第1日目は寒波とまでは言えませんが気温が低く、武徳殿の中は真冬に近い程ではないかという冷え方で震え上がりました。
2日目には例年通り、まず平安神宮神殿で武徳祭を行い、関係者により、剣道界の安泰・大会の無事終了を祈念しました。
その後に武徳殿で行われる開始式には、京都市長・京都府知事(代読)の歓迎の辞を頂き、さらに地元京都府剣道連盟会長を引き受けて頂いている伊吹文明衆議院議長から歓迎のご挨拶がありました。
朝稽古後に挨拶を交わす参加者(筆者写す)
今年の大会、出場は3,300名余で前年に比較して微増の傾向にあります。参加者は家族連れで来場する人も多く、演武の他に朝稽古やグループごとの懇親の集りをこなすなど、剣道のお祭りともいうべき多彩な行事を楽しんでおられました。
大会の参加者には、海外からの方も目立ちます。各国の剣連会長を通じて申し込んでもらうのが正式ルートですが、その人数を掲げます。剣道22名・居合道6名・杖道2名・各種の形2名です。この中には欧州剣道連盟会長のA・デュカルメ氏、イタリア剣道連盟会長のG・モレッティー氏、アメリカ剣道連盟の田川順照・加藤彰三両八段、カナダ剣道連盟の鎌田重隆八段などが含まれています。
参加者の中にはご夫婦で参加の方もおられます。濱崎範士ご夫妻(東京都)・氏家教士ご夫妻(東京都)・神崎教士ご夫妻(大阪府)・小風教士ご夫妻(東京都)この他にもおられましたらご容赦ください。剣道人として羨ましいご家庭です。
演武大会の期間中、または終了後に多くの同窓会や同期会が開かれます。その中の一つ、声を掛けて頂いた会の風景をご紹介させて頂きます。
平成5年八段取得者の同期会(未在会)風景
4月29日(祝)より4日間、京都市西京極の京都市立体育館で行われた剣道八・七・六段審査、演武大会終了後、名古屋市に場所を移して行われる剣道七・六段審査には合計6千名の剣士が挑戦されましたが、順調に終えることができました。
最難関の剣道八段審査には2日間を通じて1,729名が挑戦されましたが、一次合格178名・二次合格者16名、合格率1%を割る難関でした。
これに対し、七段審査は京都・名古屋合せて318名、剣道六段は合計461名の合格者を数えました。不合格の方は、修錬を重ね、再度挑戦されることを念じます。
さて居合道・杖道の八段審査も5月3日(祝)に京都市武道センターで行われました。その結果、居合道八段は受審者161名・一次合格19名・最終合格者7名となりました。
杖道八段審査の受験者32名・一次合格6名・最終合格者1名という結果でした。
審査会には海外からも多数の挑戦者がおられました。剣道八段10名・居合道八段2名・杖道八段2名で合格者なし、剣道七段15名・合格3名、剣道六段5名・合格者2名という結果でした。
多数の受審者の努力に敬意を表し、また熱心に審査に当られた審査員・係員の労苦に謝意を表します。
大会終了後の翌日6日(祝)には、称号審査会が行われました。剣道から86名推薦のあった範士については、10名の審査員による予備審査の後に本審査を行い、東京都・中山峯雄氏、石川県・末平佑二氏の2名が合格されました。
また5月3日(祝)に行われた居合道・杖道の範士審査会では、居合道で長崎県・宮崎賢太郎氏、杖道で東京都・大里耕平氏がそれぞれ合格されました。